ギリシャ&ギリシャ神話英雄の神話

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ギリシャ共和国(ギリシャきょうわこく)、通称ギリシャは、ヨーロッパの南東、バルカン半島最南端部に位置する共和制国家である。半島南部およびペロポネソス半島に加えエーゲ海を中心に存在するおよそ3,000もの島によって構成される。北は西からアルバニア、マケドニア共和国、ブルガリアと、東はトルコと国境を接している。本土の周囲は東にはエーゲ海、西はイオニア海、南は地中海に囲まれている。

ギリシャは地中海文明のルーツの一つであり、複数の文明の接点に位置する国としてヨーロッパ、アフリカ、アジアの歴史に大きな影響を与える。

現在のギリシャは国連、EUおよびNATOの加盟国である。1896年と2004年には首都アテネで近代オリンピックが開催された。

ギリシャ神話英雄の神話

ギリシア神話に登場する多くの人間は、ヘーシオドスがうたった第4の時代、つまり「英雄・半神」の時代に属している。それらは、すでにホメーロスが遠い昔の伝承、栄えある祖先たちの勲の物語としてうたっていたものである。

彼らの時代がいつ頃のことなのか、神話上での時代の相関が一つにある。他方、考古学資料によるギリシア神話の英雄譚が淵源すると考えられる古代の都市遺跡や文化、戦争の痕跡などから推定される時代がある。英雄たちの時代の始まりとしては、プロメーテウスの神話の延長上にあるとも言える「大洪水」伝説を起点に取ることが一つに考えられる。

大洪水とデウカリオーン
プロメーテウスの息子デウカリオーンは、エピメーテウスとパンドーラーのあいだの娘ピュラーを妻にするが、大洪水は、このときに起こったとされる。洪水を生き延びたデウカリオーンは、多くの息子・娘の父親となる。ピュラーとのあいだに息子ヘレーンが生まれたが、彼は自分の名を取って、古代ギリシア人をヘレーン(複数形:ヘレーネス)と呼んだ[79]。デウカリオーンの息子・孫には、ドーロス、アイオロス、アカイオス、イオーンがいたとされ、それぞれが、ドーリス人、アイオリス人、アカイア人、イオーニア人の名祖となったとされるが、これは歴史的な背景はないと思われる。

アイオロスの裔

エンデュミオーンしかし、アイオロスの子孫には、ギリシア神話で活躍する有名な人物がある。子孫はテッサリアで活躍し、イオールコスに王都を建造した。ハルモスの家系には、ミニュアースとその裔でアルゴナウタイで著名なイアーソーン、また医神として後に知られるアスクレーピオスがいる。また孫娘のテューローからは、子孫としてネーレウス(ポントスの子のネーレウス神とは別)、その子でトロイア戦争の智将として知られるピュロス王ネストールがおり、ペリアース、アドメートス、メラムプース、またアルゴス王で「テーバイ攻めの七将」の総帥であるアドラストスなどがいる。ネーレウスはピュロスの王都を建造した。

アイオロスの娘婿アエトリオスの子孫の人物としては、月の女神セレーネーとの恋で知られるエンデュミオーン、カリュドーン王オイネウス、その子のメレアグロス、テューデウス兄弟がいる。メレアグロスはホメーロスでも言及されていたが(『イーリアス』)、猪退治の話は後世になって潤色され、「カリュドーンの猪狩り」として、女勇者アタランテーも含めて多数の英雄が参加した出来事となった。またメレアグロスの姉妹デーイアネイラの夫はヘーラクレースであり、二人のあいだに生まれたヒュロスはスパルテー(ラケダイモーン)王朝の祖である[82]。

ペロプスの裔
タンタロスは冥府のタルタロスで永劫の罰を受けて苦しんでいるが、その家系にも有名な人物がいる。彼の息子のペロプスは富貴に驕った父親によって切り刻まれ、オリュンポスの神々への料理として差し出された。この行い故にタンタロスは劫罰を受けたともされるが、別の説もある。神々はペロプスを生き返らせた。生き返って後、彼は世に稀な美少年となり、ポセイドーンが彼を愛して天界に連れて行ったともされる。

ペロプスは神々の寵愛を受けてペロポネーソスを征服した。彼の子孫にミュケーナイ王アトレウスがあり、アガメムノーンとその弟スパルタ王メネラーオスはアトレウスの子孫(子)に当たる(この故、ホメーロスは、「アトレイデース=アトレウスの息子」と二人を呼ぶ)。アガメムノーンはトロイア戦争のアカイア勢総帥でありクリュタイメーストラーの夫で、メネラーオスは戦争の発端ともなった美女ヘレネーの夫である。アガメムノーンの息子と娘が、ギリシア悲劇で名を知られるオレステース、エーレクトラー、イーピゲネイアとなる。

ミュケーナイ王家の悲劇に密接に関連するアイギストスもペロプスの子孫で、オレステースと血が繋がっている。他方、アトレウスの兄弟とされるアルカトオスの娘ペリボイアは、アイアコスの息子であるサラミス王テラモーンの妻であり、二人のあいだの息子がアイアースである。また、テラモーンの兄弟でアイアコスのいま一人の息子がペーレウスで、「ペーレウスの息子」(ペーレイデース)が、トロイア戦争の英雄アキレウスとなる。

テーバイ王家とクレーテー王家

竜と戦うカドモスリビュアーは雌牛となったイーオーの孫娘に当たっている。リビュアーと海神ポセイドーンのあいだに生まれたのがフェニキア王アゲーノールで、テーバイ王家の祖であるカドモスと、クレーテー王家の祖とも言える娘エウローペーは彼の子である。

カドモスは竜の歯から生まれた戦士でよく知られる。彼の孫がテーバイ王ペンテウスであり、ペンテウスはディオニューソス信仰を否定したため、狂乱する女たちに引き裂かれて死んだ。その女たちのなかには、彼の母アガウエーや伯母イーノーも含まれていたとされる。カドモスの娘にはセメレーがあり、彼女はゼウスの愛を受けてディオニューソスを生んだ。ペンテウスとディオニューソスは従兄弟同士となる。カドモスの別系統の孫にラブダコスがあり、彼はラーイオスの父で、ラーイオスの息子がオイディプースである。オイディプースには妻イオカステーのあいだに娘アンティゴネー等がいる。

他方、カドモスの姉妹にエウローペーがあり、彼女はクレーテー王アステリオスの妻であるが、ゼウスが彼女を愛しミーノースが生まれる。ミーノースの幾人かの息子と娘のなかで、カトレウスは娘を通じてアガメムノーンの祖父に当たり、同様に、彼はパラメーデースの祖父である。カトレウスの孫には他にイードメネウスがいる。ミーノースの娘アリアドネーは、本来人間ではなく女神とも考えられるが、ディオニューソスの妻となってオイノピオーン等の子をもうけた。クレーテーの迷宮へと入って行ったテーセウスは、アテーナイ王アイゲウスの息子とも、ポセイドーンの息子ともされるが、ミーノースの娘パイドラーを妻とした。

トロイア王家

ヘクトールとパリスアガメムノーンを総帥とするアカイア勢(古代ギリシア人)に侵攻され、十年の戦争の後、陥落したトロイアは、トロイア戦争の舞台として名高い。小アジア西端に位置するこの都城の支配者は、ゼウスを祖とするダルダノスの子孫である。彼はトロイア市を創建し、キュベレー崇拝をプリュギアに導いたとされる。ダルダノスの孫がトロースで、彼がトロイアの名祖である。トロースには三人の息子があり、イーロス、アッサラコス、ガニュメーデースである。ガニュメーデースは美少年中の美少年と言われ、ゼウスがこれを攫ってオリュンポスの酒盃捧持者とした。

イーロスはラーオメドーンの父で、後の老トロイア王プリアモスの祖父である。英雄ヘクトール、パリス(アレクサンドロス)はプリアモスの息子で、予言で名高いカッサンドラーはその娘である。またヘクトールの妻アンドロマケーは、トロイア陥落後、アキレウスの息子ネオプトレモスの奴隷とされ、彼の子を生む。

他方、トロースの三人の息子の最後の一人アッサラコスはアンキーセースの祖父で、アンキーセースとアプロディーテー女神のあいだに生まれたのがアイネイアースである。トロイア陥落後、彼は諸方を放浪してローマに辿り着く。ウェルギリウスは彼を主人公としてラテン語叙事詩『アイネーイス』を著した。アイネイアースの息子アスカニオス(イウールス)はローマの名家ユーリア氏族(gens Iulia)の祖とされる。

英雄たちの結集
ギリシア神話には、断片的なエピソード以外に、一人の人物あるいは一つの事件が、複雑に展開し、数多くの英雄たちがその物語に関係してくる「複合物語」とも呼べる神話譚がある。

アテーナイの王子であった「テーセウス」の生涯は、劇的な展開を見せ、クレーテー島の迷宮での冒険を経た後になっても、コルキスの王女メーデイアが義母であったり、その魔術と戦うなど、ミーノース王やアリアドネーを含め、広い範囲の多数の人物と関わりを持っている。

弓を引くヘーラクレーステーセウスの生涯以上に華麗というか、夥しい人物が関係し、また様々な重要事件に参加するヘーラクレースの物語もまた英雄の結集する神話とも言える。彼が課された十二の難題の物語だけでも十分に複雑であるが、ヘーラクレースは「アルゴナウタイ」の一員でもある。更に、アポロドーロスによると、ゼウスの王権が確立した後に起こったとされるギガース(巨人)たちとの戦いに彼も参加している。また、オルペウス教の断片的な資料では、原初にクロノス Khronos(時)別名ヘーラクレースが出現したという記述がある[85]。これが英雄ヘーラクレースかどうか分からないが、無関係とも言えない。

ギリシア中から英雄が集結して冒険に出発するという話は、イアーソーンを船長とするコルキスの金羊毛皮をめぐる「アルゴナウタイ」の物語がそうであり、ここではヘーラクレースやオルペウスなども参加している。

また、アドラストスを総帥とする「テーバイ攻めの七将」の神話やその後日談でもある、七将の息子たちの活躍も、英雄たちが結集した物語である。メレアグロスの猪退治の伝承が潤色され、拡大した規模で語られるようになった「カリュドーンの猪狩り」の神話もまた、メレアグロスを中心に、カストールとポリュデウケースの兄弟、テーセウス、イアーソーン、ペーレウスとテラモーン、そしてアタランテーなども参加した英雄の結集物語である。

トロイア戦争
ギリシア神話上で、もっとも古く、もっとも重層的に伝承や神話や物語が蓄積されているのは、「トロイア戦争」をめぐる物語である。古典ギリシアの文学史にあって、紀元前9世紀ないし8世紀に、突如として完成された形で、ホメーロスの二大叙事詩、すなわち『イーリアス』と『オデュッセイア』が出現する。詳細な研究の結果、これらの物語は突如出現したのではなく、その前史ともいうべき過程が存在したことが分かっている[86]。

トロイア戦争をめぐっては、その前提となったパリスの審判の物語や、ギリシアとトロイエのあいだの交渉、アカイア軍の出陣、そして長期に渡る戦争の経過などが知られている。『イーリアス』は十年に及ぶ戦争のなかのある時点を切り出し、劇的に、アキレウスの怒りと、代理で出陣したパトロクロスの戦死、ヘクトールとの闘い、そして彼の死と、その葬送のための厳粛な静けさで物語が閉じる。他方、『オデュッセイア』では、戦争の終結後、帰国しようとしたオデュッセウスが嵐に出会い、様々な苦難を経て故郷へと帰る物語が記されている。

トロイア戦争の経過の全貌はどのようなものであったのか、トロイエ陥落のための「木馬の計略」の話などは、断片的な物語としては伝わっていたが、完全な形のものは今日伝存していない。しかし、この神話あるいは歴史的な伝承が、大きな物語圏を築いていたことは今日知られている。

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